クライマーズ・ハイ

1985年8月12日。

その日,沖縄の姉妹都市から中高生がわが市に訪れ,私は地元の代表として,交流キャンプに参加。会場である市内のとある中学校にいました。

沖縄と宮崎,互いの環境の違いを語りながら盛り上がっているところに,誰かがつけたテレビが水を差しました。
テレビでは乗客名簿が繰り返し読まれ,何か大変なことが起こっているとは感じられましたが,「水を差す」と表現するには,あまりにも痛ましい事故が起こったと知ったのは,翌日,その地域でホームステイしたお宅で見たニュースでした。


空旅客機史上最悪の惨事,日航墜落事故。
事故現場である群馬の地元新聞「北関東新聞社」での1週間を描いた,ドキュメンタリータッチの映画(もちろん新聞社も映画の中身もフィクション)です。
まだ公開されたばかりの映画なので,内容については触れないでおきます。

日航墜落に関する紙面を総括する一記者と,社長や局内の上司,他の部署(時折他社も絡む)との間で見られる,力関係,社会の不条理,仕事へのプライドと意地,衝突と結束。その一つ一つに全力でぶつかる男たち,いえ,人間たちの生き様がよく描かれていました。

スクリーンから感じられるリアリティ。それは役者さんたちの緊張感を持った演技の賜物です。今回の演出はアドリブOK,そして多少失敗しても監督が止めるまではそのまま撮影を続けると言うのが,ルールであったのだそうです。見ていると,普通のドラマでは止められそうな小さなミスが結構あるのですが,みなそのままの緊張感を持って次のセリフを語り続けます。それらのシーンが,返ってリアルさをもって私たちに訴えかけてきます。
ある番組で,主演の堤真一さんが,アドリブがOKな分,ぶつかっている相手がいつ殴ってくるか分からないくらいの緊張感があった,という旨のお話をされていたのですが,その緊張感がそのままスクリーンに表れていました。


またリアリティを感じられるのは,原作の力も欠かせません。フィクションであると言いながらも,そこには原作者・横山秀夫が,群馬の新聞社の記者としてこの事故を経験したことが大きく反映されていることは,想像に難くありません。

映画は1985年の様子が流れる中で,時折現在の主人公の様子が割り込んできますが,一見無関係なシーンのようで,後々効果を表してきます。ただ,私はこのシーンを入れる代わりに,もう少し社内の人間関係の掘り下げに同じ時間使ってくれてもよかったかなぁ…とは感じました。


でも,社会人として,人間として大切なことと,マスコミの一面をみせてくれたいい映画だと思いました。この夏,観たい映画の候補の中に追加してみてはいかがでしょうか。


おまけですが,最後のスタッフロールに「東島真一郎」「鶴岡丈志」と言う名前が出てきます。GCCXファンの方はお楽しみに〜!。